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前回原稿を書いていた頃、友人とのランチで“今度 「きたるべきおんがくについて」 っていうタイトルでメモを書くことにしたよ”と話すと、すかさず “
IZUMIさん、コールマンですね…” と切り返された。おっと、オーネット・コールマンのことは忘れていた。たしかにオーネットには1959年、それまでのコード進行にのっとって演奏するJAZZをやめた
『The Shape of Jazz to Come』 という革新的アルバムがある。邦題が 『ジャズ 来るべきもの』 だった。 ブランショの 『来るべき書物』 という文章の最後の段落は 「おそらくの高み」 と題されている。そしてそれは 「偶然も、作品も、思想も、おそらくという高み以外のところでは、姿を消している」
という文で終わる。 そして“コールマンですね…”と言ってくれた友人には感謝。昨年亡くなったジャック・デリダはコールマンと共演したことがある。たぶん哲学者でJAZZミュージシャンと同じステージに立ったのはデリダだけだろう。97年7月1日Parisラ・ヴィレットのフェスティヴァル会場。ステージでは怒涛のなか終わりまで読むことがままならなかったテクストは、翌98年 「ユリイカ」 11月号に全文が紹介された。タイトルは椎名亮輔氏の訳で 『弾け――名前(を)[遊べ――名前で]』 。そこでは後半、アルトーをも引きながら最後 即興することの欲求を 「値段ノナイ出来事ト呼ビタイ」 へ至る。 さて、前置きが長くなった。もう一度前回に戻ってメモを加えたい。 内臓波動。食と性と宇宙リズム。大和民族の象徴思考。声と言葉、響きと化した内臓表情。脊椎動物の五億年の歴史。など、示唆的な提言が続く。 三木成夫の著作は多くないが是非一読をお奨めする。その三木成夫が青年の頃、習っていたヴァイオリンを手放せず、医学へ進むか、音楽へ進むか、長い間悩んだそうだ。さらに先生が香川県出身と聞いて同郷のパーカッショニスト土取利行を思い出す。後に再登場すると思うがピーター・ブルックの音楽を長く担当し、現在も多方面で活躍中。土取は、これらのことがわかっている音楽家のひとりだろう。(著作もあり 『縄文の音』 他) 土取利行の音楽世界 で、魚。 魚はわれわれのように体の外に開いている外耳はない。中耳もなくて、あるのは内耳と側線だ。子供の頃、焼き魚を食べていると 母親に“そのミミのところもちゃんと食べてね・・・”って言われていた。そうあの横筋の赤身のところだ。母はそこが聴覚器官と判っていたんだろうか? 人力検索「はてな」 魚はどうやって音を認識するのですか? そういえばわれわれの内耳に平衡感覚をつかさどる三半規管があるのも、元をたどれば魚の内耳と側線から来ているのだろう。ちなみに、ヒトは内耳に炭酸カルシウムで出来た
「平衡石」 というものを持っている。ただ石というより砂に近いようだが。・・・そして平衡の衡の字の真ん中に 「魚」 が入っている。(ちょっと珍説か) “ブラジルにヴァレンシアという言葉があるんだが、あれは英語でいうスイングの意味に近い。英語のバランスと同義でね。スイングする=ポジティヴ・ヴァイブレーションすることが大事…”と教えてくれたのはドン・チェリーだった。先のオーネット・コールマンのもとで育ち、ミュージシャンではいち早くワールドミュージックを体現、私たちにそのスピリットを伝えてくれた。名作 『永遠のリズム』 (独1968年MPS盤。71年にはポーランドの作曲家ペンデレツキーとの共演もある)は是非聴きなおしておきたい。 DON CHERRY: ETERNAL RHYTHM スイングとか・・・今だとグルーヴか。これらは内耳の三半規管と身体に隠れている側線!も関係しているのかも知れない。あるいは 「ノリ」 とかね。さらには 「タメ」 なんかもそうかな。タテノリもあればヨコノリもある。憑依=のりうつるのノリもある。身体と魂を揺さぶるヴァイブレーションは、このあたりにも起因しているのだろう。いずれにせよ問題は 「リズム」 だ。 音/音楽を記述することの困難は、前回の終わりに 高橋悠治のエピグラフで代表させた。
今は秋。 義父の一周忌で帰省した北海道旭川郊外。丘の外れにある一軒のカフェ 「里山房」 。写真家がスタジオにしていたという不思議な建物のテラス。足早に近づく冬の気配…そこに聴き覚えのあるソプラノが流れてきた。これは何だったか?
必死に記憶の回路を呼び覚まし・・・そうだ 「Bailero」 。 そこで歌っていたのはサラ・ブライトマンだったが、私にとっては我が青春のソニー・シャーロック! 妻リンダが歌い、シャーロックがギターで激しくオブリガート。伴奏はミルフォード高速グレイヴス。ゴリゴリ刻むノリス・ジョーンズにデイヴ・バレルのアルペジオ…その音が聴こえてならなかった。 本当に凄いミュージシャンは伴奏でもスゴイのだ。ジョニ・ミッチェルを唄伴するジャコはスゴイ。ここで伴奏するミルフォードもスゴイ。自らアルバムにBest Bandとクレジットし、すべてが黒い 『Black Woman』 が録音されたのが1969年だったか。 「バイレロ」 はフランス中部オーヴェルニュ地方の古い羊飼いの唄。ラディカル Blues Manシャーロックはなぜその頃この曲に目をつけB面の1曲目に入れたのか、は謎だ。 SONNY SHARROCK DISCOGRAPHY 「池の月」No.7<オーヴェルニュの歌> オーヴェルニュの話ではアンドレ・リクロやリヨンARFI(想像的民族音楽探求協会)のアラン・ジベール。シャーロックの話では若手のノエル・アクショテまで紹介しておきたかったが、今回は行数が尽きた。 「Winter & Winter GmbH」ノエル・アクショテ さあ、来週はバルカンの寒村からやってくるファンファーレ・チォカリーアだ。迎え撃つ 「渋さ知らズ」 とどんな交雑音楽がうまれるだろうか。 (財)埼玉県芸術文化振興財団 公式HP p.s. 京都芸術センター発行の冊子 『diatxt.』 最新16号は、特集 「音を聴く/音をつくる」 です。御参考に。 (’05.Oct.01.H.IZUMI) |
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著者プロフィール: 泉 秀樹(いずみ ひでき)
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